<< 「茅ヶ崎の光」喫茶茶会記店主筆 | main | 2018/11/9(fri)喫茶茶会記 深夜廟 Yumiko Yoshimoto (guitar) ソロ >>
北里義之・タップダンス+コンタクトインプロヴィセーション:巌流島の闘い──米澤一平『In The Zone 2018』第21回 with 木原浩太
タップダンス+コンタクトインプロヴィセーション:巌流島の闘い──米澤一平『In The Zone 2018』第21回 with 木原浩太
北里義之 


タップダンスの米澤一平が主催するダンス異種格闘技シリーズ「In The Zone 2018」の第21回公演は、両人にとってこれが初共演となる木原浩太を迎えた。周知の通り木原は、加藤みや子ダンススペースに所属して幅広く活躍する切れ味抜群のダンサーである。今回の公演は、リハーサル等はせず、当日2時間ほど話しただけというかなり自由度の高い即興セッションだった。

冒頭の時間帯、タップシューズを床に擦りつけて “さわり” のような音を出していた米澤だったが、靴を履いても裸足になっても、ほとんどの場面で共演者から距離をとり、カタコトと小刻みに踏むタップがまるでよく吠える犬を散歩に連れて歩くようだったその足元をねらって、また接近してこないボディを標的にして、木原がくりかえしコンタクト・インプロヴィゼーションをしかけていくという展開が、ふたりのバトル的な関係を作っていく共演となった。米澤のタップシューズを裸足の足で踏んで、片足、両足と音を立てるのをとめたり、靴下を片方脱いでふたりで引きあいながら共演者をふりまわすなど、つないだ手を離さないように動いたり(手をはなさずに動く場面は後半にも登場した)、威嚇するように片足を高くあげてじっと米澤の胸元に突きつけたり、床上を横転・回転しながら身体をタップダンサーの足元に寄せていったりするなど、木原が共演者にくりかえし迫っていく様子は、試合を挑む柔道家さながらで、武道的なものに見えていた。もしかするとこれは、コンタクトインプロが合気道から影響を受けた部分があらわれたものかもしれない。



一方の米澤は、こうした攻めの姿勢と四つに組みあうのではなく、共演者から一定の距離を置きながら、強力なタップのリズムで応酬していくというダンスをしたが、これはタップの持つ性格ゆえといえるだろう。そこに生まれる身体的な関係は極めてシリアスなもので、息もつかせぬ緊迫感にあふれたものだった。短い休憩が入ったあとの後半で、米澤が木原を肩に担ぎあげて歩いたり、共演者の身体のうえにどっちが長く乗るかという床上のレスリングのような場面を作ったのは、コンタクトがひとつ階段を登ったという意味で、本公演のクライマックスを構成したと思う。

音楽なしで進行していく緊迫感のあるダンスバトル。そうした身体のシリアスさとは裏腹の関係で、観客席をなごませ笑いで包むものがあった。そのひとつは、レスリングのような床上のコンタクトのあと米澤がかけたジャズのバラード演奏である。驚いたことに、音楽が流れると同時に、みるみる変質していくのが見えるくらい、ふたりの動きにはっきりと変化があらわれたのである。これはたぶん、音がふたつの身体の間に緩衝帯を作り出し、米澤のタップと木原のダンスが、それぞれ音の流れに身体をまかせることでコンタクトなしでもひとつの場所にいられるようになったからと思われる。



もうひとつは、動きながらアドリブで交わされる日常的でもあればナンセンスでもあるような会話。たとえばそれは、4足1,000円の靴下のこと、タップシューズのこと、突然ふってわいた靴下盗難疑惑、最近2キロも太ってしまった理由などで、これらの話はダンスがシリアスなものであればあるほどそこから “ずらし” の効果を引き出しておかしみを与え、観客を笑いで包んでいくのだった。しゃべりながらのダンスというスタイルは、今日広くおこなわれているコンテの形式だが、言葉と身体の関係でいうと、ふたりのパフォーマンスは、大植真太郎/森山未來/平原慎太郎の「談ス」に近いもののように感じられた。おそらく黙々と(ある意味では地味に)進行していくコンタクトの演技と、まるで漫才のような丁々発止の語りのカップリングが共通しているからだろう。しかも言葉は朗読だとか演技的/演劇的な性格を帯びていないワーディング・パフォーマンスとしておこなわれ、その意味でも、この晩のセッションは昨今のコンテシーンでは珍しいくらい男臭いダンスバトルになった。(観劇日:2018年10月30日)



写真提供:m.yoshihisa
コメント
コメントする