北里義之・2015/6/21 木野彩子:一期一会 vol.2 with 川口隆夫


6月21日(日)木野彩子さんの隔月ダンス企画「一期一会」の第二回に参加しました。「他者の身体を生きてみること」をテーマに、インドから帰国直後の川口隆夫さんをゲストに迎え、生前に実際の公演を観ることができなかったという大野一雄さんの1970年代の踊りを、記録映像を駆使して完全コピーした『大野一雄について』成立の経緯や、実際にどのようにしてコピーがおこなわれるかという実演、公演の反復が当初の驚きや即興性をなくしていくことの困難さについて、さらには大野一雄さんや土方巽さんがダンスで描いた女性像についての挑発的な問題提起など、2時間におよぶトークは盛沢山の内容でした。川口さんがされている、伝統の継承でもパロディでもない、動きをただ即物的に完全コピーしていくという行為の(ダンス的な)意味づけのむずかしさを再認識させられました。第二部はおふたりの即興セッション。大野一雄さんの身体やダンスの特徴、動きの構成の仕方などに木野さんがチャレンジしてみるところから、木野さんのリードで川口さんが踊る場面となり、最後はコンタクト・インプロヴィゼーションへ、作品的な要素の加味へと発展していきました。あらためて考えると、木野さんのコンタクトは初めて拝見したかも。



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北里義之・2015/6/14 木野彩子+池田千夏@sound & herb vol.12


喫茶茶会記で開催されている、池田千夏さんのピアノとジプシーカフェ葉花さんのハーブを楽しむ会「sound & herb vol.12」に、ダンスの木野彩子さんがゲスト出演され、第一部は白い衣装で「春夏秋冬」を、第二部は黒い衣装で「日の出〜日の入り」をと、ふたつのテーマで踊られました。タイトルは『CADENDIA 自然的リズム』。その場の状況にあわせ、洗練された身体語彙を選び出し、即興的なパラフレーズによってひとつの文脈を生み出しながら、あたかも論文構成するように展開されていく木野さんのダンスは、動きのエクリチュールを持っていることにおいて特筆すべきものと思います。高速回転する身体の明快さに彩られたダンスには、彼女独自の文体があります。それと触覚の先鋭化にともなうエロティシズムの解放。後者については、今回のようななごやかなサロンの雰囲気のなかでも、床のうえで就寝する姿勢をとりながら、指だけがそこいらを歩きまわり、自分自身の身体にもよじのぼるという第二部の最後にあらわれた指のダンス(夢のなかの小人でしょうか?)などに、象徴的にあらわれていたと思います。今月の21日には、ご自身で主催されている喫茶茶会記の「一期一会」で、『大野一雄について』の川口隆夫さんと共演されることになっています。こちらも楽しみです。


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北里義之・2015/6/2 木村 由:ひかげぼっこ vol.2


6月2日(火)、偶数月におこなわれる木村由さんのソロダンス公演「ひかげぼっこ」の第2回。下手側に木製の椅子、その脚もとに大きく湾曲した枯木の枝。すぐわきの床置きライトに照らされて、背後の縦格子の壁のうえを上手側に流れるゆがんだ影。その影の先を闇が包んでいるというニュアンス。見るもののイメージの世界で、森のはずれの風景が広がります。ダンサーは下手側を使うことなく、上手側の闇の領域に居ながら、基本的に床のうえを這いまわり、転げまわる感じ。後半になり、ステージ中央で立ちあがっても、なにがしかのダンスを展開するのではなく、外側からは意味のよくつかめない曖昧な動きを重ねていきます。さかんに動きまわった「ひかげぼっこ」初回公演と正反対の方向から場にアプローチした身体の測量作業、あるいは、いろいろの見えないものを見せること。暗闇のなかでこんなに動かない木村さんを見るのは、とても珍しいことと思います。暗闇がダンサーの身体に大きく作用して、自身の内面を凝視する作業と場の測量作業が反転をくり返して、「ひかげぼっこ」の可能性のひとつを生み出していました。ひとつの環境に別の方向からくりかえし身体をさらし、そこで起こってくる出来事を受けとめる作業が「ひかげぼっこ」での即興になっています。


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北里義之・2015/5/16 喜多尾 浩代:そこふく風 特別編♯2


5月16日(土)楽屋の窓と玄関の扉を開け放して風を通し、たくさんの小さな記憶を閉じこめた喫茶茶会記を朝の時間のなかに開く、「身体事」の喜多尾 浩代さんによる『そこふく風 特別編♯2』がありました。涼しい風が通ったり、朝の光が降り注いだり、近くで仕事をする人の声がしたり、行燈のような暗さの照明のなかを動いたり、小雨が降りはじめたりという環境を、ていねいに、繊細に感覚していく身体を介して、その場に居あわせた人の感覚が同時に開かれていくという参加型パフォーマンス。観客が観客のままでいられなくなり、環境のなかに溶けこんでしまう体験が、気持ちよさとして(あるいは、たしかな感覚として)身体に残ります。前回[2014年7月19日]も参加させていただいたのですが、季節の違いはもちろん、写真撮影をされた平尾菜美さんとの共演ではなかったこと、参加者が5人から11人に増えたこと、そしてなによりも二回目であることなどが、みなさんの自由の感じ方に影響を与えていたように思います。楽屋の奥から出発して暗い大部屋へ、さらに喫茶室を抜けて外へ出ると、小雨が降る路地を表通りまでという動線は同じでしたが、これはあらかじめ予定していたということではなく、環境に身体を開きながら動いていったときの結果という、ある意味での必然だったようです。

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北里義之・2015/4/7 木村 由:ひかげぼっこ vol.1



4月7日(火)喫茶茶会記にて、木村由さんの無音独舞シリーズ──闇間に揺れる蠢く「ひかげぼっこ」がスタートしました。スポットの下での無音ソロダンスは、踊りの部分だけ取り出せば、2年前に喫茶茶会記でおこなわれた森重靖宗さんとの初回デュオ(2013年6月28日)を思い起こさせます。そのときはピンクの薔薇の花束、光のなかに置かれた一輪の薔薇、チェロの弦楽サウンド、床に浮き出る光と闇の境界領域など、いろいろな要素があったのですが、今回はそうしたものを排除していった先でなにができるかという点で、自然光のなかでおこなわれる明大前キッドの無音独舞「ひっそりかん」を反転させた発想といえるのではないかと思います。もちろん、闇は光の一部であり、光は闇の一部であるわけで、闇のなかに鮮烈な光を見、光のなかに潜む闇を感じられなくてはならないでしょうが、現実の場面では、視線を盲目状態に置かないための人工の光が入れられ、身体も環境に別様に応答することから、おのずから別の回路が開いていくということようです。初回となる今回は、衣裳の選択ともども、木村さんが経堂のギャラリー「街路樹」でされているちゃぶ台ダンスめいたところ、中野PlanBで公演していたころの古い記憶(スタッフの発言)、最近よく拝見する左右に身体を傾けながらのダイナミックな動きなど、さまざまな要素を試して本公演の独自性を “身体測量” されている感がありました。

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北里義之・12/8 「おちょこ+新井陽子+木村 由:即興セッションやります!」@喫茶茶会記




12月8日(月)喫茶茶会記にて、ピアノの新井陽子さん、ヴォイスのおちょこさん、ダンスの木村由さんの3人が、トリオとしては初の即興セッションにのぞまれました。「女性の即興」という言い方には、ジェンダー的な配慮が必要と思うのですが、ここまでの経験としていうなら、やはりそこに男性プレイヤーが入った場合とは異なる(あるいは、男性である私にはタブーに感じられる領域にまで踏みこんでいく)、特別ななにかが現われているように思います。音楽とダンスというジャンルの垣根を越えて、パフォーマンスの身体性が前面に突出してくること、言葉と身体の蝶番という、サウンド的にも特別な位置にあるヴォイスのおちょこさんが参加していること、そして新井さんとのデュオにおいて、これまで木村さんがひときわ高い位置からジャンプするような冒険的ダンスを試みてきたことなどから、本公演は、「無礼講」と呼びたくなるような、徹底した逸脱が試されるセッションになったと思います。高度な技術の支えがあってのアクションであることはもちろんですが、こうした生命が沸き立つような場所では、すべての音や動きが、書き割りを持たないダイレクトなもの、具体的なものとしてたちあらわれてきます。


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北里義之-12/1〜12/7 平尾菜美 写真展『そこふく風』@喫茶茶会記[喫茶室]



12月1日(月)から7日(日)にかけての一週間、平尾菜美さんの写真展『そこふく風』が喫茶茶会記[喫茶室]で開催されています。本展は、通常の写真展と違い、「身体事」の喜多尾 浩代さんとの、時間差のあるコラボレーションになっています。今年の夏、9時という早朝の時間帯に茶会記を開放しておこなわれた喜多尾さんの公演『そこふく風〜特別編〜』におけるおふたりの “共演” において、平尾さんは「視覚を重視せず、全身の感覚器官を解放して働かせ、わたし自身もパフォーマンスをしているように」撮影されたとのこと。行為としての写真[撮影]は、古くからカメラという装置が解き放つ人の欲望として知られているものですが、ここでは映像にブレやボケの効果をもたらし、プロヴォーク写真の記憶を現代に呼び戻すとともに、フレームによって切断されたダンサーの身体を外部のものたち(環境)と連結して、フェティッシュな印象をもたらしています。壁にかかった大判の写真、テーブルに載せたはがき大の写真、さらにアコーディオンのように開閉する4冊の冊子にまとめられた組写真など、小さな喫茶室での展示方法にも工夫がなされ、時間のスパンを組みこんだ視線の多様性を感覚させるなど、写真家の並々ならぬ力量を感じさせるものとなっています。

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北里義之-11/8 トマツタカヒロ - 玉川麻衣 - 森重靖宗:迷宮のエルドラド@千駄木STOODIO


千駄木のギャラリーSTOODIOにて、喫茶茶会記のマスター福地さんが企画した2デイズ写真/ペン画展「迷宮のエルドラド」があり、11月8日(土)の初日を観ることができました。横に長い木造家屋の壁面をふたつに分け、左側の壁では、チェリスト森重靖宗さんが日常のなかからすくいあげた光景を展示する写真展が、右側の壁では、「樹木」「妖怪」「狼図」などをテーマにした玉川麻衣さんのペン画展が開かれ、左側の一角には、立入り禁止の紐を縦横に張りめぐらせたトマツタカヒロさんのコーナーも設置されていました。森重さんの写真は、これまで写真集やスライドショー上映などで観てきましたが、写真展は今回初めてです。人があまり意識することのない、なんの変哲もない光景に視線を向け、この一瞬しかないと思わせるような(啓示的な)光のなかに対象をとらえるスタイルは、感覚だけの勝負というべきもので、森重さんの演奏スタイルにも通じるように思います。世界の曖昧な領域を曖昧なままにとらえた映像は、強烈な物語性を喚起してくるのですが、接写が多めに採用された本展では、世界との親密度が増したように感じられました。

 展示会場で、肉態表現のトマツタカヒロさんが、森重靖宗さん(8日)やチューバの高岡大祐さん(9日)とデュオセッションするのも、本展の目玉でした。画廊の玄関を入って目の前、ギャラリーの中央には、それそのものがオブジェにも見えるふたつのサンドバックや赤いグローブがバランスよく吊るされ、トマツさんの激しいアクションを受ける装置になっていました。初日の様子を記しますと、セッションの冒頭、墨痕を散りばめた柔道着のような衣装に身を包み、黒い布で顔の上半分をおおったトマツさんは、立ち並ぶ人の間から出現、床を這ってサンドバックを時計回りに迂回し、手探りで二階への階段を這い登ると、高い足音をさせながら階上を移動、なぜこんなところに扉が?という場所についている扉を開けて太い梁のうえに出ると、そこからチェロ奏者の目の前に懸垂で降りる離れ業を見せました。下に降りて目隠しをはずしてから、サンドバックを殴る蹴るのアクション、突然の床への倒れこみ、サンドバックを担ぎあげて歩きまわるなど一連の流れがあったあと、会場に来ていた男の子を抱きあげて会場をなごませ、終幕となりました。椅子に腰かけて、ひとところを動かずに演奏した森重さんと真逆な動きが面白かった。喫茶茶会記が培ってきたネットワークの力が最大限に発揮されたグループ展でした。
北里義之-「11/2 木野彩子+ユーグ・ヴァンサン:Dance and Music」


11月2日(土)喫茶茶会記にて、横浜BankARTで八木美知依さんとの『静(Shizuka)』再演を終えたばかりのダンサー木野彩子さんと、台湾ツアーにむけて離日直前のユーグ・ヴァンサンさんによるセッションがありました。冒頭の暗転から、ダンサーは部屋の中央に吊りさげられた弱い電球の周囲を回り、遅れて楽屋口から登場したチェロ奏者は、下手に立ったまま楽器を演奏するという導入部の決めはあったものの、公演全体は、振付けのない即興セッションでおこなわれたそうです。振付けはなくても話合いはあるとのことで、そのあたりが「即興と作品の狭間」といわれるゆえんなのでしょう。時間経過とともに少しずつ光が入り、世界がだんだん明るくなってくるという演出のなか、ピアノ椅子に座るユーグさんと壁前でのダンス、ふたりが交互におこなう観客席への前進と後退、上手の椅子に座ったユーグさんと部屋の中央でのダンス(立ったまま演奏者に相対して、観客に背中を見せて、床のスピーディーな動きなど)などがあったあと、最後はふたたび弱い電球に戻り、光をはさむ両者の対峙をへて、まっすぐに床に寝たダンサーの周囲を演奏者がチェロを引きずりながらグルグル回るという、緊迫感あふれる場面の連続からなるセッションでした。
北里義之-「10/3 高原朝彦d-Factory vol.11 with Chris Koh@喫茶茶会記」


10月3日(金)喫茶茶会記にて、ロンドンの出身で、現在日本に在住するヴァイオリン奏者クリス・コーさんをゲストに迎えた高原朝彦さんの<d-Factory vol.11>がありました。それぞれの即興路線を爆走する機関車が、おたがいを駆り立てながら、音楽を二倍にも三倍にもふくらませていくという、本シリーズでおなじみのスタイルとは少し違い、目の覚めるようなスピード感と即応力によって、共演者の演奏にぴったりと寄り添うコーさんのフレンドリーな資質によって、この晩の演奏は、初共演にもかかわらず、完成度の高い、みごとなデュオ・アンサンブルを形作っていたと思います。第二部では、高原さんから、ソロになったりデュオになったりしようという提案がなされ、ふたりの間に少し空間を開けたノイズの演奏からスタート、ごく自然に、多彩な音楽性を聴かせる展開へと進みました。最後の短いセットは、珍しくボサノバを意識した演奏(コーさんの甘いメロディ!)になったのですが、これも新鮮でした。再演希望!


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